ボーイズドントクライ

シン、おまえは頭が良くてさ、高2のとき付き合ってた女の子を妊娠させてしまった、シン、立川の駅で僕たちは終電をなくしていて、シン、おまえの着ているフランスのブランドのティーシャツがくしゃくしゃで、1万円払ったのにたたなかったとかしらねぇよ、シン、おまえは頭が良くてさ、お洒落で、僕なんかよりもずっともてるのに、立川の自衛隊基地の脇のフェンスを、パクったチャリで走りながら、あまりにも長すぎる道に、話すことがなくなり、シン、君が叫んでる歌が最初はなんだかわからなかった、
シン、僕はもう3年以上もドラムをたたいてなくて、中学のころのクソダサい僕らが本当にボーイズみたいな演奏をして歌っていた歌、シン、僕は詩を書くときは一人で書く、君は1万円を払って腰を振る、僕と君が2人でできる事はもう、あのころ好きだった歌を歌う、それだけになっちゃったんだよ、この歌だって僕たちはもうほとんど忘れていて声が重なるのはボーイズドントクライっていうフレーズだけでさ、それ以外の歌詞がどんなに暗い内容だって関係ないんだよ、ボーイズドントクライってそれは、もうすでに泣き出してしまった少年たちに言ってるのか、それとも顔をゆがめて泣くのをこらえている少年に言ったのか、わからないから、もうボーイズじゃない僕たちは、まだ泣いたっていいのか、どうか
どうか
どうか
どうか、教えてくれ、僕たちは本当に、好きな女の子とセックスすることしかできないのか、セックスしかできないのか、あのころなにが起きたのか、フェンスの脇で僕たちは何をしているのか、シン、おまえは頭が良くてさ、泣いてる奴なんか死ねばいいんだ、そんな奴の気持ちなんか考える必要はないんだよ、シン、もしも今僕が君の前で泣いたら、2度と戻ってこなくていい、頭痛は消えてしまう、夢を2度とあきらめなくなってしまう、自信と希望がゆっくりと僕の眼の中に入り込む、2度と涙が流れない、僕たちはもうボーイズじゃないんだよ、