カットマン

この世界はイスが見ている夢だ
僕がイスにそう語りかけるとき
僕は あるいは誰も そのイスに座れなくなってしまう

僕の顔も君の顔も
そこに見えているのだからあるはずのものが
やっぱりなにかかけていて
お互いの顔を見ると切なくなったりする

そういったことが
世界中に音もなくあふれて広がって
視力だけ 
花のように束ねたら
僕たちの変わらなかったものが
悲しそうに機能を失っている

僕たちはきっと、そこにいるだけで部屋になる
座れないイスも
僕の顔も君の顔もその中
どうしようもなくわきだす さまざまな想いを
さまざまな方法でさまざまな言語で
どうか伝わらないようにと画策する

肉体、についている口が
願望を3回となえると
すでに それが もう達成されたあとの世界に
到達していて
肉体、についている目がぱちくりする

スィッチを押して
最初からついていなかった照明を消す
耳に聞こえない音を必死でイメージするように
君が生まれる前から
君の事を
知っている人がいたんだ

だから、
なにもかも
なにもかもがどれだけみじかくっても
その中で、きっと詩を3つかける
さようならと
さようならと
もうひとつを
どうか、誰にも伝わらないように