彼が商売を再開する日

彼が商売を再開する日
きっと渋谷には長い行列が出来るだろう
僕らは雨がふっているのを見るのが好きだからその日はきっと雨がふっているだろう
その光景はきっとたいして壮観で警官はなんと間違えるだろう
警官を馬鹿にすることはこの世で1番面白い

彼が商売を再開する日
ひさびさに僕らは愉快な気持ちになれるだろう
都内のさまざまな場所からさまざまな人間、学生、会社員、画家、主婦、工員、老人
なんかが集まり
粉やカプセル、葉なんかを大きく高く腕に掲げ空に見せ付けるだろう
そうして僕らの禁断症状は何か叫びながらゆっくり、あるいは性急に溶け始めるだろう

彼が商売を再開する日
僕らの靴紐がかまって貰いたそうに解けるが僕たちは誰も見ない
学校には教師しかいなくなる
電話なんか電話じゃなくなるんだ ひどく愉快だろう
彼は弱虫だから留置場ではきっと檻の中に入れなくって
母国の言葉で何か祈ったんだろう
「壁はなんの罪も犯さない、どんな壁も自由に」
僕らは彼のわからない言葉から運ばれてくるものが大好きだ
誕生日にもらったペットボトルや奥歯を大切そうに抱えながら
覚えるべき事は覚えたし あとはニコニコするだけ

彼が商売を再開する日
いなくなった君のお父さんがふらっとそこへ戻ってくる
僕らは夜じゃない
白い太陽なんだよ