僕がおならするたびCDがとぶ

真夜中に窓を開け放して、長袖のティーシャツを2枚とスウェットの上にジャケットを着てマフラーを巻きベッドの上で毛布にくるまり歯をならしながらギュっと目を閉じガタガタ震えていた僕は虫だったんですね
僕は死刑になってもかまわない
小学2年生のころ、僕は近くの花壇で姉を捕まえて虫カゴに入れた そのあとそれをどこに置いたのかも忘れて、姉を入れた虫カゴの存在も忘れていつのまにか何ヶ月かすぎた 小学2年生の終わりに僕の家族は引越しする事になり、姉を捕まえた場所から離れた
そして、僕が小学4年生のとき、庭の隅の物置をあけ、虫カゴをみつけ中をみたら、茶色い枯葉のようなサナギの抜け殻と奇形のように小さく細すぎる姉がひからびていた 姉は引越しの荷物の中にまぎれて車の中で運ばれていた そのときすでに死んでいたのかどうかはわからないけど、脱皮していた 虫カゴの中は真っ暗で食べるための葉もない、まるで真冬のように悲惨でけれどそれでも姉は生きようとして脱皮していた
きっと姉になればこの状況も変わっているだろう、明るい世界が待っているに違いないと思ったんだろうか けれど状況は変わらず、狭い虫カゴの中、飛べずにひからびた 花の蜜も明るい陽の光も一度も知らなかった
僕は虫カゴの中を覗いた日、風呂場で全裸になって泣き喚いた あれほど泣いた記憶はちょっとほかにはない
僕はこれからもこの事をずっと覚えているつもりなのでいつかどこかで神様に死刑と宣告されたらなんの抵抗もせず死ぬだろう
僕がおならするたびCDがとぶ でも姉は一度も飛べなかった