すみませんでした

昨日の深夜、童貞を捨てた僕がいまだに童貞の僕のアパートを訪ねてきた。外は雨で、童貞を捨てた僕はびしょ濡れになって呼び鈴を押し続けた。童貞の僕は童貞を捨てた僕を部屋にいれお茶を出してあげたけど、童貞を捨てた僕は終始無言で、童貞の僕は自分のこと、テレビのこと、最近読んだ本のこと、なんかを必死でしゃべった。しゃべる事がまったくなくなったとき、はじめて、死のう、と思った。童貞を捨てた僕は何かに耐えているかのような眼で童貞の僕をみつめ、最後に一言「がんばれ」と言って出て行った。姿はすぐに見えなくなった。彼はこれからもびしょ濡れになるのだろう。